エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
夫に相応しい妻になりたいのなら現状を悲観するより、外見と内面をを磨く努力をすればいいと分かっている。
でも今の澄夏は前向きになる程の心の余裕が持てないでいた。
それどころか、夫と離婚した方がいいのではないかと真剣に悩んでいるところなのだから。
こんな風に考えるようになったきっかけは、約五か月前に行われた国政選挙にある。
それまで五期連続当選を果たしていた澄夏の父、岩倉通成が、無所属の候補者にダブルスコアで敗北したのだ。
ライバル候補は見目の良い新人議員。
メディアへの露出も多く人気が急上昇していたところに加えて、タイミング悪く澄夏の父に官僚へのパワハラ疑惑が浮上したところだった。
パワハラ疑惑は誤解だと証明出来たが、有権者に広がった悪いイメージの払拭が間に合わず、あえなく落選。
代議士としての地位を失ったショックと、その後の身の振り方が思うようにいかない父は気力を失い、人との交流を拒むようになった。
それでは駄目だと親切に助言をくれる人にも威圧的な返事をする。自棄になっているのだろう。
さらに同時期に、結婚してから陰日向で支えていた母が事故に遭い入院した。精神的な負担が大きかったからか、怪我が回復に向かっても体のあちこちに新たな不調が見つかり、なかなか退院出来ないでいる。
岩倉家の環境は、一瞬にして激変した。
世間では没落したと揶揄されているが、それは間違っていないと澄夏は思っている。