エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
振り向くと真咲が苦笑いを浮かべて、高畑達が去って行った方を眺めていた。

「南雲さんは行かないのか?」

彼女はかなり酒に強いし、人と飲みに行くのが好きなはずだ。一人暮らしで急な誘いにも応じられると言っていた。

「さすがに今日は疲れていて、大勢で騒ぐ気になれませんよ」

真咲は肩をすくめて言う。
彼女は仕事熱心な上に超がつく努力家だ。集中力も凄く、休憩を忘れて業務に打ち込んでいる姿をたびたび見かける。

高畑いわく、鉄の美女。しかしそんな彼女もさすがに連日の激務に参っているようだ。

「南雲さんは皆のフォローもしてくれてたからな。俺も本当に助かったよ」
「お役に立てたのならよかったです」
「感謝してる。今日はゆっくり休んでな」

一哉がそう言うと、真咲の表情に影が差した。

「どうしたんだ?」
「いえ、疲れてはいるんですけど真っ直ぐ帰るのも味気ない気がして……須和さんよかったら食事に付き合っていただけませんか?」
「え?」
「落ち着いたお店でゆっくりしたいんです。須和さんとだったら寛げると思うので」

一哉は真咲の突然の誘いに戸惑いながらも、心情を隠して苦笑いをしてみせた。
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