シークレットの標的(ターゲット)
ワンモアタイム、ワンモアチャンス

ーーー朝だ。
よく寝た。



昨夜は緒方さんの言う通り寝室に鍵をかけて休ませてもらった。

私が緒方さんのベッドで図々しく寝てもいいのかってことも考えたけど、リビングのソファーでは熟睡することは難しいし、1LDK のマンションで何時に帰宅するかわからない緒方さんに気を遣いながらリビングで寝るのもお互いにとってどうなのかと思った結果だ。

あの段ボール箱に入っていた可愛い部屋着に身を包み、ベッドに入ったらすぐに深い眠りに落ちてしまって緒方さんが帰ってきたのかどうかもわからない。

寝室の鍵を開けてリビングを覗くとバスルームからシャワーの音がする。

どうやら帰ってきているらしい。
ホッとするような緊張するような。

うーん、朝ごはんの支度とか私がするべきなんだろうか。
それより、顔を洗いに行きたいけど、洗面所はバスルームの扉の前だからタイミングが悪く全裸?の緒方さんと鉢合わせしてしまたら目も当てられない。

よし、とりあえず寝室に戻ろう。
そう決めてミネラルウォーターをもらって寝室に入ろうとしたら、運悪く洗面所のドアが開いて上裸にスエットズボンという格好の緒方さんと鉢合わせしてしまった。

「お、おはようゴザイマス」

「おはよう。よく眠れた?」

「おかげさまで」

慌てて視線をそらしたけど、髪が濡れたままで上半身裸の緒方さんの色気がヤバい。
バスタオルを首からかけていなかったら鼻血ものだ。

わたし、男性の筋肉が好きなんだよね。
ジムトレーニングで過酷な筋トレしてつけた筋肉ってやつじゃなくて日常の生活や仕事で自然についたんですって自然なやつ。

緒方さんって脱ぐといい筋肉してる。
大胸筋が程よく張ってて、肩と上腕が盛り上がってて三角筋の形もきれいだし、あれきっと広背筋もすごいはず。

いけない、いけない。
見たくなっちゃう。
変態扱いされたら生きていけない。
これはもう逃げるに限る。

「顔を洗いたいから洗面所を借りてもいい?」

「そんなに急いで逃げなくても」

返事を待たずに洗面所に向かおうとした私に緒方さんが笑顔で近付いてくる。

「私にも乙女の恥じらいってものがあるのよ」

「今さらじゃないのかな」

爽やかな朝からなんて話だ。
あの時は酔ってたから私の理性が新幹線で東京から九州辺りにお出かけをしてしまっていたのだ。

「望海、俺の筋肉好きなんだろ。好きなだけ触ってもいいよ」

じりじりと笑顔で迫ってくる緒方さんの圧力に負けて後退る。
背中にじわりと嫌な汗が流れた。

「朝から何を言ってんの」

「夜ならいい?」

「そういう話じゃないから」

壁際に追い込まれた私と目前に迫る緒方さん。

問題は私が拒絶しきれずにいるってこと。
緒方さんもそれをよくわかっているんだろう。絶妙な距離で立っている。

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