エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

「私、涼ちゃんの彼女じゃなかったの?」

すがるように尋ねると、涼ちゃんが面倒くさそうな表情を浮かべて大きなため息をついた。

「二カ月以上も会っていないのに、まだ付き合っていると思っていたのかよ。自然消滅したと思うのが普通だろ」

投げやりな態度と思いやりのない言葉を目のあたりにして、涼ちゃんの気持ちが私から離れてしまったのだと実感する。けれど、涼ちゃんを好きだという思いは、そう簡単には変わらない。

「で、でも、メジャーデビューしたら結婚しようって言ってくれたよね?」

ふたりで交わした約束を思い出してほしくて、プロポーズの言葉を持ち出す。しかし、効果はなかった。

「あのさ、お前のそういうところ重いんだよな。俺、まだ二十八だぜ? まだ遊びたいお年頃じゃん? それに不感症な女と結婚する気ないから」

涼ちゃんが唇の端を上げてニヤリと笑う。

私にとって涼ちゃんは初めて付き合った男性で、交際がスタートしてからすぐに体を求められた。

ベッドに乱暴に押し倒されて戸惑ったものの、拒否したらフラれてしまうと思い、怖いと言えないまま涼ちゃんに初めてを捧げた。しかし、その後も苦痛を伴う行為は好きになれず、瞼をギュッと閉じて涼ちゃんが果てるのを待つだけで精いっぱい。
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