エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

彼が用意してくれた部屋は最上階のスイートルームで、ヨーロピアンスタイルの室内は広々としており、大きな窓からは東京(とうきょう)の夜景が一望できる。でも、今の私にはアンティーク調の内装も、綺麗な景色にも興味ない。

涼ちゃんと別れたのが夢だったらいいのにと思いながら、ダイニングに移動するとミニバーに設置されている冷蔵庫を開け、中から缶ビールを三本取り出す。そして、リビングに戻るとソファに座り、プルタブを開けて口をつけた。

「うっ、苦い」

体質なのかビールは酔いやすいためあまり好きではなく、飲み会ではサワーやカクテルをオーダーする。けれど、今日はなにもかも忘れて酔いたい気分。目をギュッと閉じて黄金色の液体を喉に流し込む。

ビールをひと缶飲み干して二本目のプルタブを開けたとき、電話をかけるために外に出ていた彼が部屋に戻って来た。

テーブルの上に並んだ缶ビールを見て、彼が目を丸くする。

「なにも食べずに飲むと悪酔いするぞ」

「酔いたいからいいんです」

明日は日曜日で仕事も休み。どんなに酔っ払っても朝早く起きなくていいから気が楽だ。

忠告を無視して二本目の缶ビールに口をつけると、彼があきれたように「仕方ないな」とつぶやき、ルームサービスのメニューを手にして電話をかける。
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