エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
彼が『仕方ないな』と言うのも、これで二度目。あきれながらも、なにかと面倒を見てくれる彼はやっぱり親切だ。
落ち着きがあってクールな外見と、困っている人を放っておけない世話好きなギャップがおもしろい。
フフフッと笑い声をあげると、ルームサービスをオーダーし終わった彼が私の斜め向かいのソファに腰を下ろした。
「もう酔ったのか?」
「まだ酔ってないですよ」
いくらビールが体質に合わないといっても、一本飲み終わっただけで酔うわけがない。
心配性な一面がなぜかおかしく思えて、再び笑いが込み上げてきた。
「笑い上戸か。まあ、メソメソ泣かれるよりいいけどな」
彼がひとり言のようにつぶやき、スーツのジャケットを脱いでテーブルの上にある缶ビールを手に取る。
「乾杯」
「乾杯」
お互いの缶ビールをコチンと合わせる。
ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲む姿は、見ていて気持ちがいい。
「ん? どうした?」
私の視線に気づいた彼が、不思議そうに首をかしげた。
「お酒、強そうだなって思って」
「そうだな。付き合いで飲んでいたら、いつの間にか強くなっていた」
「そうですか」
「ああ」
会話が途切れ、ふたりの間に沈黙が流れる。