エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

これで縁談の話はなくなったとホッと胸をなで下ろす。しかし、それも束の間。父親が「顔がわかればいいんだろ」と言って、朝比奈さんの写真と釣書を私の部屋に置いていってしまった。

親が決めた学校に進学して、就職先も縁故でよつば銀行に入行した。

今までなに不自由なく育ててくれたことには感謝しているけれど、結婚まで親の言いなりにはなりたくない。

縁談を勝手に進める親に抵抗するように、彼の写真と釣書に目を通さずに今日まで過ごしてきた。

「しかし帰国当日に挨拶に来てくれるとは、うれしいじゃないか。なあ、美桜?」

父親が私の前で満足げな表情を浮かべる。

赴任先であるドバイから朝比奈さんが帰国するのは、今年の十月にアサヒナ自動車の社長に就任するためだと聞いている。

長時間のフライトで疲れているにもかかわらず、真っ先にウチに立ち寄ってくれる彼は誠実な人だと思うし、信頼できる相手と結婚させたいという親心も理解できる。けれど『なあ?』と同意を求められても困る。だって私は、涼ちゃんと結婚したいのだから。

リビングの壁かけ時計の針は午後五時を指している。

朝比奈さんから(なり)()国際空港に到着したという連絡が入ったのは、今から三時間前のこと。渋滞に巻き込まれたとしても、田園(でんえん)調(ちょう)()にあるこの家にそろそろ着いてもいい頃だ。
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