エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

親に急かされるままに身なりを整えてしまったけれど、時間が経つにつれて不安が胸に広がっていく。

このまま彼と会ってしまったら、縁談話が進んでしまう。

父親に言われるがまま、好きでもない人と結婚して本当に後悔しない?

心の中で自分自身に問いかけてみると、簡単に答えが出た。

「私、朝比奈さんとは結婚できません!」

今まで言えずにいた本心を口にすると、ソファから勢いよく立ち上がってリビングを後にする。

「美桜! どこに行くんだ!」

父親の慌てる声を無視して玄関ホールに急ぎ、パンプスを履いて外に飛び出す。

ヒールをコツコツと鳴らして、()(ちょう)並木の通りを駆け抜ける。父親が後を追って来ないか背後を気にしていると、駅前のロータリーにたどり着いた。

そうだ。今から電車で涼ちゃんのマンションに行こう。

曲を作っている最中にスマホが鳴ると集中力が切れるため、私からは連絡しないという約束をしている。だから涼ちゃんとは、かれこれ二カ月以上も会っていないけれど、今回は緊急事態で助けが必要だ。

早速、連絡を取ろうとしたものの、今になってスマホとお財布が入ったバッグを持たずに家を飛び出して来たのだと気づく。

「どうしよう」

このままでは涼ちゃんへ連絡もできないし、電車にも乗れない。

息を切らせて、ロータリーの脇にあるベンチに力なく腰を下ろした。
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