エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
怪我をしていたら大変だと思い、座り込んだままでいる酔っ払いのもとに駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
見て見ぬ振りはできずに様子をうかがっていると、突然手首を掴まれてしまった。
「お姉さん、優しいねえ」
至近距離で吐き出された息はお酒臭く、私を見つめる目はうつろだ。その不気味な様子を目のあたりにした瞬間、寒くもないのに体がガタガタと震え出す。
それでも自分の身は自分で守ると気持ちを奮い立たせて、掴まれた手を引く。しかし、酔っ払いの力はちっとも緩まない。
「は、離してください」
怯えながらも必死に声をあげたそのとき、スーツ姿の男性が私たちの間に割り入ってきた。
「彼女から手を離さないと警察を呼ぶぞ」
私を庇うように酔っ払いの前に立ちはだかった彼の身長は見上げるほど高く、肩幅も背中も広い。
「わ、わかったよ」
体格がいい男性を見て尻込みしたようだ。酔っ払いが観念したように、ゆらりと立ち上がった。
千鳥足で私たちの前から去って行く酔っ払いのうしろ姿を見て、ホッと息をつく。けれど、手首を力強く絡まれた恐怖はまだ治まらない。
「大丈夫か?」
体の震えを静めるように両腕を擦る私の様子を見た彼が、眉根を寄せて心配げな表情を浮かべる。