エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
斜めに流した前髪の下に見えた澄んだ瞳と視線が合った瞬間、心臓がドキッと音を立てる。
二重の目だけでなく通った鼻筋も、少し厚みのある形がいい唇もシャープな顎のラインも、どのパーツもいちいちカッコいいから目のやり場に困ってしまう。
「助けていただいて、ありがとうございました」
「いや」
どこの誰だか知らないけれど、彼がいなかったら今頃どうなっていたかわからない。
危ないところをイケメンに助けられるというシチュエーションに胸を高鳴らせて、男性に頭を下げた。
私には涼ちゃんという素敵な彼氏がいるというのに、初対面の男性にドキドキしてしまったことがなんともうしろめたい。
「では、これで失礼します」
罪悪感から逃れるために、この場から立ち去ろうとした。けれど、私を呼び止める声が耳に届く。
「ちょっと待て。どこへ行く?」
「これから知り合いのところに行こうと思っています」
「なにも持たずに?」
彼が怪しむような視線を私に向ける。
初対面の私がどこに行くのか尋ねてくるのはどうしてだろうと思ったものの、助けた相手が手ぶらなのはたしかに気になると納得する。
「これには事情があって……」
「困っているなら話を聞くが」