エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

お腹の子の父親は朝比奈さんなのだから、結婚してふたりで育てていくのが自然な流れだと思っても、どうしても気になることがある。

「朝比奈さんは大丈夫ですか?」

「ん? 大丈夫とはなにに対してだ?」

私の曖昧な言葉を聞いた彼が首をかしげる。

私たちは結婚準備を進めているうちに妊娠してしまった、いわゆる授かり婚やおめでた婚とは違う。

縁談の返事を保留にしているにもかかわらず妊娠したと報告したら、お互いの親が困惑するのは目に見えているし、デキ婚を快く思わない人もいるだろう。

「会社や取引先の人たちから、計画性がないと陰口を叩かれるのではないかと思って……」

不安な思いを口にすると、彼がハハッと短い笑い声をあげる。

「なんだ。そんなことを気にしていたのか。まあ、結婚もしていないのに子供ができたと公表したら、渋い顔をする者もいると思うが放っておけばいい。新しい命を授かったんだ。俺はこんなに喜ばしいことはないと思っている」

朝比奈さんが妊娠を前向きに捉えてくれているとわかって心が軽くなる。

彼の言う通り、周りの人たちにどう思われようが関係ない。私の努めは、お腹の子を無事に生んで育てることだ。

授かった小さな命を初めて愛しく思いながら、お腹に手をあてる。
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