エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

涼しげなサマーニットとブラックパンツというラフなスタイルがよく似合っているし、ハンドルを握る姿も見惚れてしまうくらい素敵だ。

今になって運転席と助手席の距離の近さを意識してしまい、胸が高鳴り始める。

気恥ずかしさを感じて彼の横顔を直視できずに目を逸らすと、思いがけない言葉が耳に届いた。

「褒めてくれるのはうれしいが、名前で呼び合うと決めただろ?」

彼の言う通り、私たちはお互いを名前で呼ぼうと約束した。けれど、今までの呼び名をすぐに変えるのは案外難しい。

「慣れるまで待ってください」

急かされてもYESとは言えず、正直な気持ちを口にする。しかし、彼も簡単には納得してくれない。

「いつになったら慣れるんだ?」

「それはわかりません」

強気で言い返す私がおもしろかったようだ。彼の陽気な笑い声が車内に響く。

「わかった。気長に待つとするよ」

最終的には私の気持ちを優先してくれる優しさがうれしくて、口もとが勝手に緩むのを実感した。

彼が運転するスポーツタイプの車はアサヒナ自動車製で、メタリックグレーのボディはピカピカに磨き上げられていたし、車内の足もとは広く、シートに体がフィットして乗り心地がいい。
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