エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

「男性です」

正直に打ち明けると、彼が顔をしかめた。

「その男性とはどういう関係なんだ?」

「彼氏ですけど……」

「なるほど」

さっきから『なるほど』という言葉を繰り返す彼が、なにに対して納得しているのかちっともわからない。でもこの先、二度と会わない彼を気にかける必要はない。

「では、本当にこれで失礼します」

酔っ払いから助けてくれただけでなく、愚痴まで聞いてくれた親切でカッコいい彼に頭を下げる。すると、思いがけない言葉が頭上から降り落ちてきた。

「彼氏の家までタクシーで送る」

「いえ、結構です」

気を遣ってくれるのはうれしいけれど、涼ちゃんのマンションまで送ってもらうのは、いくらなんでも気が引ける。

首を左右に大きく振り、すぐさま厚意を断った。しかし、彼も簡単には引き下がらない。

「遠慮するな。手ぶらの女性をひとりにはしておけないし、それに暗くなってきた。さっきのような酔っ払いにまた絡まれてもいいのか?」

家を飛び出して来たときはまだ明るかった空も、太陽が沈んだ今は藍色となって、駅前の街灯にも明かりが灯っている。

一日に二度も酔っ払いに絡まられるのは絶対に嫌だし、スマホもお財布もない状態は心細い。けれど、これ以上迷惑はかけられない。
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