エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

気まずさを感じて口ごもる私に、彼が真っ直ぐな視線を向ける。その真摯な態度を目のあたりにしたら、誰でもいいから愚痴を聞いてもらいたいという衝動が込み上げてきた。

「私、お見合いが嫌で家を飛び出して来たんです」

唐突な話に驚いたのだろう。彼の目がビー玉のように丸くなる。それでも話を聞くと言い出したのは彼の方だし、吐き出したい思いはまだある。

黙ったままでいる彼にかまわずに話を続ける。

「顔も知らない相手と結婚したくないって親に言ったのに、無理やりお見合いさせようとするなんて、ひどいと思いませんか?」

父親に対する不満を熱く語る私の前で、彼が首をかしげる。

「顔も知らない?」

「ええ。相手の写真に目を通していないので」

「なるほど」

彼が短く相づちを打って顎先に手をあてる。

ひと通り話を終えたら、心の中に燻っていたモヤモヤした気持ちが晴れていくのを実感した。

「話を聞いてもらったらスッキリしました。ありがとうございます」

「いや。なかなか興味深い話を聞けてよかった。それで、これから会いに行くと言う知り合いは男性なのか女性なのか教えてほしい」

なぜ、そんなことが気になるのか不思議に思ったけれど、愚痴を聞いてもらったという負い目を感じて無視できない。
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