エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「……俺と理恵は……許嫁で大学を卒業したら結婚する予定だった」
理恵さんと付き合っていたのではないかと疑っていたものの、まさか許嫁だったとは思ってもみなかった。
衝撃的な事実を知り、胸がズキリと痛み出す。
「そ、そうでしたか」
「ああ。美桜を不安にさせたくなくて黙っていたんだ。すまない」
気遣いはうれしいけれど、お互いの家柄もよくて幼なじみなうえに、美男美女のふたりはきっと両家公認の仲だったに違いないと思うと心穏やかではいられない。
「同じ年の理恵とはなにかと気が合って、あの事件が起きなければ俺たちは結婚していたと思う」
許嫁がいたというだけでショックを受けているのに、さらに追い打ちをかけるような話をする龍臣さんを信じられない思いで見つめる。
もうこれ以上、彼女の話など聞きたくない。
耳を塞いでしまいたい衝動に駆られる。けれど、龍臣さんが意味もなく過去の出来事を語るはずがない。
「あの事件って?」
現実から目を背けてはダメだと、自分を奮い立たせて尋ねた。
「大学二年のとき、理恵がストーカーに襲われたんだ。以前から知らない男につきまとわれているような気がすると不安がっていたのに、真剣に取り合わなかった」