エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
声を震わせて話す彼に、どのような言葉をかけていいのかわからない。
慰めることも励ますこともできない無力な自分を歯がゆく思っていると、龍臣さんが大きく息をついて再び話を始める。
「ゼミの飲み会に参加しているときに、理恵が暴漢に襲われて搬送されたと連絡があって、急いで病院に駆けつけた。ベッドで眠っている理恵の顔には……殴られたような跡があって……」
彼女の痛々しい姿が目に浮かび、やり切れない思いが胸に広がる。けれど許嫁が乱暴された現実を目のあたりにした龍臣さんは、もっとつらかったはずだ。
「もういいです。なにも言わないで……」
言葉に詰まり、苦悩の表情を浮かべる様子を見るのは私もつらい。
過去の悲しい出来事を無理して話す必要はないと、龍臣さんの手を握って訴える。しかし彼は尚も話を続ける。
「ストーカーに襲われたのは俺のせいだという負い目を感じてしまって、見舞いに行っても理恵の顔をまともに見られない日が続いた。そんな俺の変化に気づいた理恵は、大丈夫だからと言って気丈に振る舞ってくれた。でも退院してからもギクシャクしてしまって、彼女の方から別れを切り出された。理恵を守れなかったという罪悪感は、きっと一生消えないと思う」