エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
消え入りそうな小さな声で話を終えた龍臣さんの頬に一筋の涙が伝う。
目の前で儚げに涙を流す様子を見ていられず、大きな背中に腕を回した。
私が理恵さんとの関係を尋ねたために、過去の悲しい出来事を思い出させてしまったうしろめたさを感じてしまう。
「情けない姿を見せたな」
「そんなことないです。つらいときはひとりで我慢しないで甘えてください」
年下の私に頼るのは心許ないかもしれないけれど、悲しみに寄り添うことならできる。
「そうだな。これからはそうする。じゃあ早速だが甘えてもいいか?」
「はい。もちろん」
龍臣さんに頼られるのは今回が初めて。私にできることならなんでもすると背筋を伸ばす。
「もう少し、このままでいさせてくれ」
私の腕の中でうつむく彼のくぐもった声が耳に届く。
簡単すぎるお願いに一瞬戸惑ったものの、これ以上泣き顔を晒したくないのかもしれないと思うとなにも言えない。
「わかりました」
過去の忌まわしい思い出から一日も早く解放されることを祈りながら、龍臣さんを抱きしめる腕に力を込めた。