クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
些細な仕草に、私の胸は条件反射できゅんとときめく。
だけど、彼はすぐにサッと手を引っ込め、


「お祖父様。申し訳ありませんが、これで失礼します」


長老に丁寧に断ってから、拓哉さんと同じ方向にスタスタと歩いていってしまった。
高級なスーツがよく似合う、広い肩、大きな背中――。
見えなくなるまで見送ってから、私は俯いてかぶりを振った。
ふと目線を動かすと、長老もまた奎吾さんを目で追っているのに気付いて、胸を張って気を取り直す。


「お祖父様。よかったら少し動かれますか? 私、お供しますから」


腰を屈めて声をかけ、車椅子の後ろに回った。
プレーキを外し、ゆっくり押して庭を歩く。
すると。


「凛花、お前は幸せか?」


脈絡のない突然の問いに、虚を衝かれた。


「え?」


足を止め、短く聞き返す。


「あの男の嫁になって、幸せか?」


長老はなにか含んだ口調で繰り返し、肩越しに私を仰いだ。
探るように動く黒い瞳。
元警察庁長官の鋭い眼光に、反射的にギクッとして目が泳ぐ。
長老は私の返事を待たずに、顔を正面に戻すと。


「梗平は瀬名一族に生まれながら、警察ではなく法曹界に進んだ変わり者だからな」


腕組みをしてしれっと言って、自分で納得して何度も頷く。
――梗平さんと奎吾さん、どっちのことを言ってるんだろう?
私は、小さく「はは」と笑うだけで済ませた。
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