クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「時任は妻の話から、警察がメールアカウントの不正使用について嗅ぎつけたことを察した。『RINKA.F』のアカウントを開設したのは、時任で間違いない。恐らく……証拠になるようなものは処分しようとするだろう」

「そんなっ……」


俺の言葉に、息をのんで絶句した。
目を彷徨わせて、唇を噛み、


「お、俺が。瀬名さんの制止を聞かずに、奥様を任意同行したせいで……」


ガシガシと髪を掻き乱して、声を消え入らせる。
俺は小さな吐息を漏らし、うなだれる彼の肩をポンと叩いた。


「そのおかげで、俺たちは時任に辿り着けた」


遠山は目を見開き、ごくっと唾を飲む。


「時任の預金口座に、事件絡みの金の異動明細が残っているはず。銀行を押さえ、トレーダーの線の証拠固めを進めよう」

「っ、了解っ!! 自分が必ず時任逮捕の証拠を押さえ、奥様を守りますっ」


声を詰まらせながらもビシッと敬礼すると、勢いよく走り出した。
会議室から出ていく背中を見送って、俺は苦笑いを浮かべた。
そして、残っている面々を見回す。


「他は、捜査に戻れ。解散」


号令を待って、他の捜査員たちも散会した。
俺は一人、会議室に残り、


「……頼もしいが、凛花を守るのは俺の使命だ」


ポツリと独り言ちて、薄汚れた天井を仰いだ。
一度、ふうと息をつき……。
スーツの裾を翻し、颯爽と会議室を後にした。
< 164 / 213 >

この作品をシェア

pagetop