クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「瀬名さんを呼び出してしまい、申し訳ありません。お話、途中でしょう? どうぞ中にお戻りください」


慇懃無礼な所長を演じているんだろうけど、彼を見下ろす目は威圧感たっぷりだ。


「い、いえ。すみません。俺もちょっと行くところがあって。凛花ちゃんとはまた日を改めて……」


しどろもどろになって、横を擦り抜けようとする彼の死角を突いて、書庫から刑事さんが出てきた。
狭い隙間から、彼らの足元だけが確認できる。
近付く気配に気付いたのか、和人君が弾かれたように振り返り……。


「これを奪ってなにをしようとしたか、署で聞かせてもらおうか」


彼の後ろに立ち、私のスマホを握った手を高々と掲げたのは、奎吾さんだった。


「え……、きゃっ!」


彼に気を取られた一瞬の隙に、和人君が私をドンと突き飛ばした。
私はバランスを崩し、廊下に倒れ込む。


「凛花っ……」

「動くなっ!!」


私に駆け寄ろうとする奎吾さんを、和人君が裏返った声で阻んだ。
あっ、と思う間もなく、私の首に太い腕が巻きついた。
視界の端で、なにかがギラッと光る。
頬にピタリと当てられる、冷たい感触――。


「ちょ……ちょっとでも近付いてみろ。刺すからな」


耳元で震える和人君の声で刃物だとわかり、心臓がドクッと沸いた。
和人君は私を羽交い締めにしたまま、無理矢理引っ張り上げた。
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