クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「純平。お前も、ミッドナイトのバイヤーの件で、職場離脱したんだって?」


背を起こしながら問うと、彼はふんと鼻を鳴らした。


「俺はお前と違って、自分が怪我するようなヘマはしてない」

「……悪かったな、ヘマで」


俺はあまりの腹立たしさで能面になって、ハッと浅い息を吐いたものの、


「だが、お前よりずっと、怖い思いをさせた」


らしくなく神妙な顔で続ける彼に、黙って視線を戻した。


「今でも、夜一人になると思い出して震えるぐらいだ。だから、なるべく早く帰るようにしていて……」

「……歩さんのためだったのか」

「なんだ。部長から聞いたんじゃなかったのか?」


純平は怪訝そうに眉尻を上げ、首を捻った。


「制止する部下を振り解き、現場に駆けつけたってことだけだ。なんのためかまでは」

「……ふん」


純平は『余計なことを喋った』とでも言いたげに、憮然とした表情を見せる。
しかし。


「まあ、説明をもらうまでもない」


俺は足を組みながら、コーヒーの缶を手に取った。
プルトップを開け、一気に三口飲み干し、


「俺もお前も、仕事以上に大事な女のためじゃなければ、職場を離れたりしない」

「せっかく築き上げたキャリアがパーになるからな」


確信を持って断言する俺に、純平も同意を示した。
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