クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「あ、奎吾さ……」

「きゃあああっ! 凛花ちゃんの旦那様!!」


菜々子さんが甲高い悲鳴をあげて私を遮り、勢いよく立ち上がった。
戸口に立った奎吾さんも、彼女の剣幕にさすがに怯んだように足を竦める。
だけど、すぐに菜々子さんに気付いて、


「ああ、その節はどうも。お騒がせしました」


とても礼儀正しく挨拶をした。
凜とした居佇まいにも、菜々子さんは「ほおっ」と溜め息を零す。


「すごい、目の保養……」

「はあ……どうも」


奎吾さんはぎこちなく笑ってから、東雲先生に目礼する。


「突然お邪魔して申し訳ございません。いつも妻がお世話になっております」

「いいえ。こちらこそ」


先生の返事を聞いてから、最後に私に目を留めてくれた。


「凛花。仕事は終わったか?」


ちょっと照れ臭そうに微笑みかけてくれる彼に、菜々子さんじゃないけどきゅんとしてしまう。


「は、はいっ。すぐ支度しますね」


頬が火照るのを感じながら、そそくさとソファから立ち上がる。


「ええ~。仕事帰りにお迎えとか……なんて優しい旦那様……」

「ええと……すみません、お先に失礼します」


妬み混じりにボヤく菜々子さんと東雲先生に頭を下げ、私はコソコソと先生の部屋から退散した。
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