クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
純平に至っては、彼女が怯えた『お役人さん』をそのまま体現する、鬼で悪魔な警察官僚。


そんな男たち二人の本家に、あの可愛い子が嫁ぐかもしれない……。
俺は意味不明に心配になって、彼女の様子を窺いに行った。


大学卒業後、一般企業に就職したのは、一族の重鎮たちの調査内容を聞いて知っていた。
ちょうど通勤途中だった彼女の姿を、遠くから捉えることに成功して――。


「っ……」


今もまたあの時と同じく、心臓がドクンと沸騰するような感覚に襲われ、俺はとっさに胸に手を当てた。
凛花のことを考え、その姿を思い浮かべるだけで、俺の鼓動は際限なくドキドキと高鳴る。


「……病気か、俺は」


顔を手で覆い、ポツリと独り言ちて溜め息をついた。
胸苦しくなって、ベッドから立ち上がった。
ドア口で名残惜しく彼女を振り返ってから、静かに目を伏せ廊下に出る。
背中で押してドアを閉め、喉を仰け反らせて低い天井を仰いだ。


――一年半前。
久しぶりに目にした凛花は昔と変わらず可愛らしかったが、すっかり大人の女性になっていた。
育ちのよさは隠しようがない。
周りにいた他の女性がまったく比較の対象にならないほど、気品に溢れていて――。
なんとも俺好みの女に成長した凛花は、俺の心臓のど真ん中を撃ち貫いた。
それが、一目惚れの瞬間だった。
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