朝を探しています
 夜中、妙な気配に目が覚めた波那は、隣で眠っている幸汰を見やって声を上げた。

「幸汰っ!」

 夕方に眠った後、体調の回復した幸汰は夕飯もいつも通りに食べ、風呂も波那と琴乃と一緒に入った。その時点で波那は雅人に幸汰が元気になったとメールを入れたのだが…

 枕元のライトを灯すと、明らかに高熱にうなされている幸汰の姿が照らし出された。慌ててそのおでこに手を当てると、燃えるような熱さが伝わってきた。
 すぐにキッチンから冷却シートと氷枕を持ってきて頭にあて、体温計で熱を測ると、40度近くなっている。

「幸汰っ! 幸汰⁈」

 揺すっても意識がはっきりしないままで、いつものような反応がない。
 震え出しそうになる手をぎゅっと握り込んで、波那はまず雅人に電話をかけた。
 呼び出し音が続くだけで、応答はない。
 唇を噛むと、次は救急の番号を押す。

 冷静になれ、冷静になれ。
 
 ずっと頭の中で唱えながら救急隊員に必要事項を伝え、琴乃を起こし、病院に向かう準備をして、幸汰を抱きかかえてマンションの出入り口に走った。


 
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