初恋幼馴染みに求婚されました
正君は私の心情を理解して「引き受けるよ」と言ってくれたので、婚約者を演じてもらう約束を交わした。

“やっぱり正君と結婚したいから別れてほしいの”

宗君が帰宅したらそう伝えよう。
彼と夫婦でいられるのは今夜まで__。

無意識に零れた涙を拭いながら、正君に礼をした。


「梨華ちゃん、俺からもお願いがあるんだけど、外出に付き合ってくれない?」

今日はこの部屋にいると辛いと思っていたので、それはありがたいお願いだった。
コクコクと頷き簡単に了承した。



お昼間にタクシーに乗って向かったのは、なんと私の実家だった。
きっと両親に謝罪をするつもりなのだと思ったが、何も触れずび久しぶりに門をくぐる。

正君を連れてきたことで妙な緊張を感じていたが、両親は仕事のため不在で加代さんしかいなかった。
彼女は正君の訪問にひどく驚いたものの、以前と変わらず温かく迎え入れた。

居間に通された後、しばらくの間は彼女が淹れたお茶と手作りのシフォンケーキを食べてゆっくりしていたけれど、外の風にあたりたくなり、正君を居間に残し縁側から庭に出た。
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