初恋幼馴染みに求婚されました
それは窓際にぶらさげているポトスの一部で、あまりにも長くなったことから茎を切って水に浸したものだ。
大抵の葉や木は水に入れると根を生やし水栽培が可能で、このポトスも1週間前に浸している。
茎の下部からはもう根が生えていた。
水の中でも逞しく生きる葉や茎を見ていると普段は元気をもらうけれど、今はそうでない。

「じゃあ梨華ちゃん、宗太朗と別れて俺と結婚する?」

「え?」

突然の提案に耳を疑った。

「元々俺と結婚する予定だったんだ。悪くないんじゃない?」

正君は柔らかな笑みを浮かべ「そうしたら宗太朗も小野さんと付き合えるんじゃないかな」と続けた。

数分前に小野さんは彼女じゃないと否定したのに__心の内が読めない。

「なんてね、冗談だよ」

正君はハハッと笑い、グラス一杯に注いでいた緑茶を一気に飲み干した。

冗談なのはすぐに理解した。
でも__悪くないかもしれない。

宗君に気を遣わせないで離縁するのに、正君と結婚をすると嘘を吐くのはよい方法な気がした。

「正君、お願いがあるの……」

私は宗君のためを思った切ない嘘を正君に持ちかけた。
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