秘密の恋は何色?
後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。と同時に抱きしめられた。
「如月(きさらぎ)先輩……?」
「あら、彰(あきら)君。華菜ちゃんにべったりね。」
クスクスと笑っているみほちゃんにムッとした顔をするけどこの場ではあまり意味はない。
如月彰―。私の幼馴染で2個上の先輩。隣の鬼山高校に通っている。
「そんなことはない。普通だ。」
「……先輩、苦しいので離れてください。」
「やだ。」
「暑苦しいです。」
少し体を捩ってみるけれど力をさらに込められてあきらめた。
「みほちゃん、助けて。」
「ちょっと無理かな?」
みほちゃんはくすくす笑いながら助ける気はなさそうだ。
むぅとふくれてみたけど意味がないのでため息を一つ。
「はぁ…。どうしよう。」
「さっきから何を話してた?」
「華菜ちゃん、高校決まってないのよ。」
「俺と同じところにすればいい。」
「おじい様はともかくとして大おばあ様はどうする気なの?華菜ちゃんのことにはとても厳しいでしょう?」
「大おばあ様には別の学校行くとは言ってあるから早く決めないといけないんだけど…。」
「大婆には『渡さない』って言ってある。」
「なるほどね。」
「この前、呼ばれたのはそのせいですか…。」
ほんの数日前―。
大おばあ様から食事会に呼ばれていた。
この時期にどうしたのだろうと思っていたけれど、高校の話かと思い少し考えさせてほしい旨を伝えるべきだと思った、が―
「華菜、あなた如月彰のことどう思っているの?」
「はい?大おばあ様、どういう意味でしょうか?」
彰先輩?どうって言われても……。
「幼馴染で隣の高校に通っている先輩です。」
「貴方には許嫁がいるのはわかっているわよね?」
「……?存じ上げております。」
「ならいいわ。ところで高校はどうする予定なの?」
「……まだ決めておりません。」
「鬼山高校にする気なの?」
「いえ、別のところにしようかと。」
「それはなぜか聞いてもいいかしら?」
「親族が多く通っているので他の人たちに目を付けられたくないからです。」
一族の血を濃く残す―。
それが使命であり決定事項。
でもそれを狙う人も少なくない。
実際、今通っている椿学園でも初めのころは起きかけた。
「再来年にはあの子も帰ってくるわ。鬼山以外にするというならそれ相応の高校を持ってきなさい。」
「わかりました、大おばあ様。」
< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop