ワケありイジワル王子はツンデレ姫様を溺愛したい。
この先、ずっと。

改めて愛を。

【拓也side】


冬休み中の登校日。
「梨愛、週末出かけないか?」
そう聞いてみると、梨愛は予想外だったのか、顔を赤く染めていた。
……可愛いすぎるだろ。
でも、今回デートに誘ったのには理由がある。
ただ梨愛と出かけたいっていう思いもあったが、前梨愛と出かけたのは、まだ“今の俺”じゃなかったから。
今の俺と、梨愛で出かけたい。
「そ、それって……デート、ってこと?」
「ああ。」
すると、より一層顔が赤くなる。
口をパクパクさせている梨愛は、見れば見るほど愛らしかった。
「梨愛は行きたくなかったか?それか、何か用事でもあるのか?」
そう聞くと、ブンブンと首を振る梨愛。
「用事なんか無いし、行きたい!拓也とデート!」
あー……名前呼びになってから、更にヤベぇんだよな……俺の心臓持つか?
行くと決まったら、俺だってカッコつけたい。
服選びから、場所から……って、キモイな、俺。
「梨愛はどこか行きたいところはあるか?」
すると、梨愛は即答で。
「梨愛、拓也が選んでくれたところに行きたい!!」
「っ……」
他の男に見せたくない。
こんな可愛いから、いつか食われるな。
……まあ、“俺以外”にはそんな事させないけど。
「じゃあ、当日梨愛迎えに行くから待ってろ。期待してくれていいからな。」
「来てくれるの!?うん、待ってる!」
そして、梨愛とデートに行く約束をした。

日曜日の10時、梨愛の家へ着き、通してもらう。
すると、梨愛の可愛い声が聞こえて。
「ご、ごめんね、拓也!ちょっと、バタバタしてて!!………もうっ、ママいいから!」
ん?ママ……って、梨愛のお母さんだよな?
それよりちょっと待て。
梨愛、可愛すぎるだろ………。
梨愛は、胸元にリボンがある白いブラウスに、
ベージュのキャミソール、コートを着ていた。
髪は珍しくポニーテール、イヤリングを付けキャスケットを被っていた。
制服じゃないカジュアルな服が、とても梨愛に合っている。
フリルガーデンやクリスマスの時もそう。
梨愛は可愛すぎ。
「拓也、かっこいい……わっ!」
「ちょっと、梨愛がお出かけに行くのって清美拓也君だったの!?あら〜、相変わらずかっこいいわね!」
梨愛、今かっこいいって……やば、暑いな。
それと。
大きな玄関から顔を覗かせたのは、梨愛の母親だった。
家が家だから、何度か会ったことがある。
「お久しぶりです、桃瀬さん。」
「久しぶりね。2年ぶりくらいかしら?前より背がグッと伸びたわねぇ。」
そうだな。
2年前くらいだから……20センチ近く伸びたか。
そんな事を思っていると、梨愛の母親……桃瀬さんはニコニコしながら尋ねてきた。
「それでそれで……2人はデート!?」
「ママ!」
「はい。」
恥ずかしがる梨愛とは裏腹に、俺はすぐに頷いた。
それは桃瀬さんも予想外だったのか、
「あら」
と声を漏らしていた。
梨愛のご両親には、いずれ言わないとと思っていた。
「梨愛さんとお付き合いをさせてもらっています。清美拓也です。」
「あら〜、そんな固い挨拶いらないわよ。それに、拓也くんには安心して任せられるわ。」
そう言ってニッコリ笑う桃瀬さん。
桃瀬さんは……俺の過去を知らないから。
そう、知らないから、こんな事が言える。
「梨愛、おはよう。」
「うん、拓也おはよう!」
桃瀬さんはさっきああ言ってくれたけど………気まずいな。
早く梨愛と出かけたい。
その思いを察するように、桃瀬さんは
「さっ、早く行って、たくさん楽しんできてね!」
と言ってくれた。
じゃあ……
「行くか、梨愛。」
「うん!」
そして、俺は梨愛の手を取る。
「わっ」
梨愛の小さいては、少し力を込めたら折れてしまいそうで。
だからこそ、俺が守ってやらなければ、と思った。

今日来たのは、トップクラスの規模を誇る商業施設だった。
ここにした理由は、品揃えがいいから梨愛の気に入ったものがあれば、と思ったのもそうだが、実は梨愛に行って欲しいところがあったのだ。
「梨愛、ちょっといいか?」
「?うん!」
それも、今人気なここにしかないカフェ。
そこにあるパフェを、梨愛に食べてもらいたかった。
「ここだ。」
「えっ、ここって今人気なカフェじゃない!?」
「ああ」
「わぁ、やったー!!」
目を輝かせている梨愛。
すると、梨愛はすぐさまカフェに入り、席に座ろうとしていた。
「梨愛、こっちだ。」
そう言って、梨愛の小さな体を抱き上げる。
「!?た、拓也?待って、みんな見てる!」
見せつけてやるんだよ、ばーか。
梨愛を見てる輩が気に入らねぇから。
そして、俺は店の奥にある個室へ入る。
「えっ、ここ……すごい可愛い!!」
そう言って、近くにある店のマスコットキャラクターの大きなぬいぐるみを抱いている梨愛。
可愛い……写真撮りてぇ。
でも、それは流石にやめておいた。
ところで、この個室はこのカフェの特別コースが食べられる。
それなりの値段がするから、予約する人はあまりいないのかと思ったら全くの逆。
値段は高いけど、予約は2年先まで埋まっているらしい。
権力は使いたくない。
だから、前々から予約しておいた。
梨愛は喜んでくれているようで良かった。
俺が梨愛の向かいに座ろうとすると。
「ねね、拓也こっち座って!!」
そう招いている所は、梨愛の隣の席。
っ……マジで、無自覚……。
ため息を吐きながら梨愛の隣へ座る。
すると、梨愛が不満そうな顔をして。
「拓也……もしかして、嫌だった?ごめんね。」
梨愛は上目遣いで顔を覗き込んでくる。
は。
「違う。そんな訳ない。」
そう言うと、梨愛はパァっと顔を明るくした。
「良かった!拓也、連れて来てくれてありがとう!今日はいっぱい楽しもうね!!」
「ああ」
そして、梨愛はメニュー表を開いた。
「わぁ、いちごもいいし、マンゴーもいいし、マスカット、桃……全部良い!抹茶もある!拓也、どうしよう選べないよ!!」
そんな梨愛の姿に、落とすように笑いがこぼれる。
気に入ったみたいだな、また来るか。
「じゃあ、全部頼むか?」
そんな俺の言葉に、梨愛は驚きを隠せていなかった。
「え!?全部は食べきれないよ!勿体ない!」
俺は、梨愛のこういう所が好きだ。
傲慢な他の令嬢達とは違う、身分とかをあまり気にしない女の子。
だから、困ってる人とかを助けていた奏多さんと、どこか重なって見えた。
梨愛は、たくさんの人を幸せに出来ると思う。
そこで、拓也はある事を思い出した。
そう言えばこの店………予約は入ってるのに持ち帰りできたよな。
「梨愛、じゃあ家に持って帰るか?」
その言葉に梨愛は耳を反応させた。
「え、出来るの!?持って帰る!でも、これだけあるから1週間経っても食べきれないかも……」
最近心配になる事がある。
梨愛は、食べなさすぎる。
昼に食べている時だって、小さいパン2つ程度。
だから、梨愛を抱き上げる時には、失礼かもしれないけど軽すぎると思ってしまう。
梨愛が倒れないか心配だ。
「梨愛、たゃんと食べろよ。」
「拓也、急にどうしたの?でもまあ、うん!」
結局、いちごのパンケーキとミルクティーにしていた。
梨愛、フリルガーデンに行った時もパンケーキを頼んでいたな。
好きなら、パンケーキだけでも全部持って帰ろう。
俺は甘いものがあまり好きじゃないから、ホイップクリームが多いこの店のパンケーキは会わなさそう。
拓也はブラックコーヒーを頼んだ。
笑い混じりに言う梨愛の頬は、いつもより少し赤かった。
梨愛は色白だからすぐに分かる。
熱……じゃ、無いよな?
心配で頬に触れた。
「拓也?」
柔らかい……じゃなくて、熱は無さそうだな。
「梨愛、体調悪くないか?」
「?うん、元気!」
じゃあ、何で頬が赤いんだ?
メイク……じゃ無いだろうし、しててもここまでじゃ無いと思う。
「本当に大丈夫か?」
「もーう、大丈夫だよっ!」
帰って梨愛を怒らせてしまった。
すると、梨愛は少し下を向いてこう言った。
「も、もしかして……梨愛ほっぺ赤い?」
ほっぺって言い方、可愛いな。
「ああ、赤い。心配だ。」
すると、更に梨愛は顔を赤くする。
今度は耳まで。
「なあ梨愛、本当に無理してないか?」
すると、梨愛は気恥しそうに話してきた。
「梨愛……多分、今日デートできるから舞い上がっちゃって、それに、拓也がかっこいいから………心臓、バクバクしてるんだよっ。
うう、恥ずかしい……」
かっこいい、俺が?
デートができるから嬉しい?
………は?可愛い、やめてくれよ……。
店に来てまでこんな事、するつもりじゃなかった。
「梨愛は無防備すぎる。」
「え?無防備って……、!?」
俺は、梨愛にキスをした。
ああ……梨愛が悪いんだからな。
そして唇を離す。
流石にこれ以上は抑えろ。
「〜〜っ、拓也、ここお、み、せ!」
ぷるぷるしながら言う梨愛。
怒っても逆効果なんだけどな。
俺の為にも、気づいて欲しい。
「はいはい。」
「拓也!全然反省してないで……ん!?」
俺は、梨愛の言葉を遮るように近くにあったキャンディを口に入れた。
「もうっ、何する……このキャンディ美味しい!」
よし、思惑通り。
テーブルにサービス的な感じで置いてあったそのキャンディは、このカフェと同じで大人気なものだった。
テレビでもよく放送されていた。
梨愛の頬は、キャンディで膨らんでいる。
ハムスターだな。
そう思っていると、
「拓也も食べる?」
そう聞いてきたから、俺は誘いに乗った。
少しだけ意地悪に。
「梨愛、そのキャンディ見せてくれ。」
そして、俺はそのキャンディを口に入れる。
「!?た、たたた拓也!?それ、梨愛がさっき……!!」
俺は今、悪い顔をしているんだろうなぁと思う。
「俺だって、いつも梨愛といる時はこんなだからな。」
そう言って、梨愛の手を俺の胸に当てる。
梨愛といる時、俺がどれだけ梨愛を愛しく思っている事か。
「拓也……心臓、梨愛と同じ……」
梨愛が頭から湯気を出していると、頼んでいたパンケーキとドリンクが来た。
梨愛は、目の前に置かれているパンケーキを見て有頂天になっている。
「拓也、食べていい?食べていい!?」
「ああ」
そして梨愛はすぐにパンケーキを口に入れた。
「ん〜〜、美味しい!」
凄く美味しそうに食べる梨愛。
見ているこちらがいい気分だ。
美味しそうに食べる子は好きだ。
もっと、幸せにしてあげたくなる。
「はい、拓也。あ〜ん!」
少々恐れていた事が現実に。
でも、梨愛の誘いを断る訳にはいかない。
それに、梨愛にこんな事をして貰えるのは、俺の特権だと思いたい。
そのチャンスを無駄にはしたくない。
俺は、パンケーキを口に入れた。

「美味い………このパンケーキ、いいな。」
クリームの量は多いが甘さ控えめで、いちごや他のベリーも、甘すぎずどちらかと言うと酸味が効いていて美味しかった。
甘いものが苦手だからと、スイーツを食べる事があまりない俺にとって、このパンケーキは新鮮だった。
……梨愛のだけじゃなくて、俺のも少しだけ持って帰るか。
俺は、このカフェが気に入り、出る時には上機嫌だった。

「ねえ拓也、梨愛拓也とお揃いのが欲しい。」
「お揃い?」
梨愛が突然言ってきて、嬉しい半面驚いていた。
お揃い……梨愛と。
これも俺の特権だろう。
「ああ、いいな。何をお揃いにするんだ?」
梨愛は腕を組んで考えている。
「うーん……梨愛、拓也の服かっこいいから、ペアルック着たい!拓也に選んで欲しいなっ」
そんな事を言っている梨愛は、しっぽを振っている子犬の様にはしゃいでいる。
それにしても、ペアルックか……それも、俺が選ぶ。
服屋に入って、拓也は数式を解くより頭を使った。
「これはどうだ?」
「わっ、可愛い!」
そして選んだのは、これから着れるように春服にした。
俺が白のハイネックにベージュのチェック柄のシャツ、下は黒のズボン。
梨愛はそれの上下が逆で、上がフリルの付いている黒のブラウスに、ベージュのチェック柄のスカート、それに合わせてバケットハット。
決まるなり梨愛は更衣室に入り、着替えたら俺の前でお決まりのくるっと回ってみせる。
これ、慣れねぇんだよなあ………それに、俺が選んだし……余計にヤバい。
どうどう!?とでも言いたげな梨愛の瞳は輝いていた。
「ああ、可愛い。他の男に見られたくないな。」
そこで梨愛は、くるっと回るのをピタッとやめた。
梨愛は、いつ見ても可愛い。
見飽きないのは、俺が梨愛に惚れているからだろうか。
そして2人は、服を買い春に着ようと約束し店を出た。
今日は、昼と同様夜の食事もここで済ませる事にした。
拓也は、屋上にあるレストランを予約していた。
そして2人は、仲睦まじく手を繋ぎながら店に入る。
今は夜の7時。
冬だから、もう空は暗く、無数の星が輝いている。
「拓也、綺麗だね………」
「ああ、でも俺は、梨愛の方が綺麗だと思う。」
嘘じゃない。
好きな女が、俺には1番綺麗に輝いて見える。
「梨愛、俺は梨愛が好きだ。」
「っ…………」
「だから、お前の隣は俺だけにしろ。俺以外なんか許さない。」
そして、夜空の下で。
「梨愛、俺と結婚しろ。」
「!」
決めていた。
絶対に今日告白すると。
今まで色々あった俺達にとって、今日のデートは特別で。
そんな日に、梨愛にプロポーズをしたかった。
梨愛は、涙を流していた。
「う……梨愛が、拓也以外の人、選ぶわけないでしょ?梨愛でよかったら、ぜひ!!」
それでも万遍の笑みで。
ああ、やっぱり。
梨愛が1番輝いている。
どんなに大きくて、色が綺麗な星よりも。
そしてポケットから取り出す。
「これ、って………」
「まだ結婚は出来ないから婚約指輪だな。」
そして、細くて綺麗な梨愛の指に指輪をはめる。
「拓也っ、ありがとう……!梨愛も、拓也の事愛してるよ!」
その言葉を聞き、拓也は安堵する。
そして梨愛を抱きしめる。
「今は抱きしめさせろ。……これでも、結構気ぃ張ってた。」
断られたらどうしようと、思ってしまっている部分もあった。
断られたとしても、諦める気はサラサラなかったが。
そして、梨愛は俺を安心させてくれた。
「梨愛だって、拓也以外の人と結婚したくない。
拓也には、梨愛の最っ高の旦那さんになってもらうんだから!………もう、十分だけどねっ」
「………梨愛の無自覚。ばーか。」
そして、2人は唇を重ねた。
その後、人生で1番のディナーの時間を楽しんだ。
その間も、梨愛の右手の薬指は輝きを増すばかりだった。
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