8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 真剣な瞳で告げるオリバーを、チャドは憎らしそうに見つめる。

『お前、もう我のことなど好きではないのだろう? であれば、我がここにいる意味はない』
「チャド! 僕はそんなことは言っていない。君の力にはなりたいって思っているってば」
『だが、もう手伝う気はないのだろう?』

 じろりとチャドに睨まれても、オリバーはひるまない。

「君のやり方では。……僕はもう、人を傷つけるようなことはしたくない。だけど、自分のやり方で、君を助けられたらって思っているんだ」
『ふん。なにを……』

 チャドは反論しようとして、気まずくなり黙る。オリバーは出会ってからずっと優しい。瀕死状態のチャドに、聖域の水を与えてくれたし、その後も食べ物をくれた。

 本来、聖獣に食物は必要ないが、チャドは昔から食べることが好きだ。だから、オリバーのくれたチーズやクッキーもとてもうれしかった。
 チャドが黙り込むと、アイラはそこに追い打ちをかけるように言う。

「オリバーに感謝した方がいいわよ。私だったら、もうけちょんけちょんにして追い出しているところだわ!」
「アイラ、黙って。……ねぇ、チャド。僕は君が、悪い聖獣だとは思っていない。あの土地を守りたいって気持ちは、本当だと思う。ただ、チャドのやり方で、本当にみんなを守れるの? いま暮らしている人たちにとって、あそこが安心で、生きるための糧を生み出す土地でなければ、土地を守ったとは言えなくなってしまうんじゃない?」
『……』

 チャドは黙ると、ただオリバーを見上げた。迷いを見透かすような、オリバーの眼差しに、ひるんでしまう。

「だから、僕の考えを聞いてくれる?」
『……わかった』

 チャドは渋々とそう言うと、寝床に戻り、座った。

『勝手に話していればいい』

* * *

 ふたりが、ドルフとリーフェに頼んでベンソン伯爵の領地に来たのは、夜だ。
 フィオナには『もう寝る』と告げてあるし、移動中は時間を止めていたので、不在は誰にも気づかれていないはずだ。

『あー重たかった!』
「失礼ね、リーフェ。私そんなに重くないよ!」

 リーフェが着くなりアイラを地面に転がしたので、アイラはぷんぷん怒っている。

「ここが、その土地?」

 初めて来るアイラは、周囲を見渡した。
< 100 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop