8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 それならばなんとなく理解できるような気がする。オリバーは頷き、続きを促した。

「でもチャドの魂は小さくって切れているの。半分もないかも」
「半分? 半分でも生きていけるの?」
「わかんないよ。でも、半分だから、力が弱いだけかもしれないよ? 最初に見たときより、今の方が力も強くなっているみたいだし」

 あの時、地下から力が吸い上げられるような感覚があった。

「なるほど……」

 アイラの意見はなかなか興味深い。

「でも、本当のところはきっと、チャドに聞いてみないとわからないよね」

 オリバーは顔を上げて、前を見据えた。逃げていても何にもならない。チャドに一度かかわった以上、彼を納得させるのも自分の務めだ。

「オリバー、チャドと話す気?」

 アイラは心配そうにオリバーを見つめた。頷くと、アイラはますますほほを膨らます。

「嫌だなぁ。また変なことになったらどうするの?」
「大丈夫だよ。僕、自分のしたいことが分かったんだ。利用されるだけにはならないし、もう迷わない」

 オリバーは自信があったが、アイラはどうも信じ切れていないようだ。

「じゃあ、私も一緒にいていい?」

 オリバーはもう、この申し出が彼女の好意であることを知っている。だから心から頷くことができた。

「もちろん。僕に気づけないこと、きっとアイラなら気づいてくれるだろ?」
「うん!」

 こうして、後宮にたどり着いたふたりは、すぐさまチャドのもとへと向かったのだ。

* * *

「チャド!」
『……なんだ? ふたりそろって』

 昨日までほぼ無視されていたというのに、突然話しかけてくる双子に、チャドは怪訝な視線を向けた。

「チャドの望みをかなえるために、どうすればいいのか考えようよ」
「そうよ。あの土地を守りたいのよね? 採掘をやめさせるための方法、いくつか考えてみましょう」

 双子は生き生きと意見を出していく。

「まずは、本当にあの土地から鉄が産出されないのかを調査しなきゃいけないと思う。父上に頼んで、調査団を組んでもらったらどうだろう」

 オリバーが言うのは妥当ではあるが、あくまでも人間の意見だ。
 自然を操る力を持つ聖獣にとっては、そんな話し合いなど面倒なだけだ。

『人間のやることなど信用ならない』
「だからと言って、恐怖で人の心を変えさせるなんて無理なんだよ」
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