8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 今日はアイラがリーフェをブラッシングしたいと言って、さんざん撫でまわしたのち、『一緒に寝よう!』と言ってさっさと連れて行ってしまった。

『アイラ、寝言がうるさいんだよなぁ』と嫌そうな声を出しつつも、リーフェもあっさりとついていったのだから、まんざらでもないのだろう。

 思い返せば、双子の部屋が分かれてから、リーフェとオリバーは一緒に寝たこともないはずだ。

 オリバーは自分とリーフェの間に、母親とドルフの間にあるような絆を、どうしても感じられないのだ。

(ドルフが僕の聖獣だったらよかったのに……)

 口には出せない願いが、ぽかんと浮かび上がっている。途端にフィオナの顔を思い出し、オリバーは申し訳ない気がしてきて、ますます眠れなくなる。

 再び寝返りを打ったオリバーを見かねたドルフが、口を開いた。

『そんなに眠れないなら、散歩にでも行くか』

 オリバーは勢いよく起き上がる。

「行く!」
『お前は昔から夜の散歩が好きだな。どれ、じゃあ今日は南の方に行ってみるか』

 ドルフは聖獣姿になると、オリバーの上着を口にくわえた。

『ちゃんと着ろよ』
「うん」

 準備万端整えてドルフの背中にしがみつくと、彼は一気に空へと駆け上がった。
 下を見れば、すでに王城が小さく見え、空は満点の星がきらめいている。

「わあ。星がすごい」

 空を飛んでいると、頭の中でぐるぐるしていた悩みが、一瞬で霧散していく。

(小さな明かりのひとつひとつが家なんだなぁ。王都にはたくさんの人が住んでいるんだ)

 それを守っているのが父のオスニエルだ。オリバーは少し誇らしいような気持ちになり、空から見える王都の街並みをいとおしく眺めた。

< 25 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop