8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
今日はアイラがリーフェをブラッシングしたいと言って、さんざん撫でまわしたのち、『一緒に寝よう!』と言ってさっさと連れて行ってしまった。
『アイラ、寝言がうるさいんだよなぁ』と嫌そうな声を出しつつも、リーフェもあっさりとついていったのだから、まんざらでもないのだろう。
思い返せば、双子の部屋が分かれてから、リーフェとオリバーは一緒に寝たこともないはずだ。
オリバーは自分とリーフェの間に、母親とドルフの間にあるような絆を、どうしても感じられないのだ。
(ドルフが僕の聖獣だったらよかったのに……)
口には出せない願いが、ぽかんと浮かび上がっている。途端にフィオナの顔を思い出し、オリバーは申し訳ない気がしてきて、ますます眠れなくなる。
再び寝返りを打ったオリバーを見かねたドルフが、口を開いた。
『そんなに眠れないなら、散歩にでも行くか』
オリバーは勢いよく起き上がる。
「行く!」
『お前は昔から夜の散歩が好きだな。どれ、じゃあ今日は南の方に行ってみるか』
ドルフは聖獣姿になると、オリバーの上着を口にくわえた。
『ちゃんと着ろよ』
「うん」
準備万端整えてドルフの背中にしがみつくと、彼は一気に空へと駆け上がった。
下を見れば、すでに王城が小さく見え、空は満点の星がきらめいている。
「わあ。星がすごい」
空を飛んでいると、頭の中でぐるぐるしていた悩みが、一瞬で霧散していく。
(小さな明かりのひとつひとつが家なんだなぁ。王都にはたくさんの人が住んでいるんだ)
それを守っているのが父のオスニエルだ。オリバーは少し誇らしいような気持ちになり、空から見える王都の街並みをいとおしく眺めた。