8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 まだ訪れたことのない南の土地に、オリバーとドルフは降り立った。
 山岳地帯だが、切り開かれていて岩肌がむき出しになっている。大きな穴が空いていて、階段状に深くなっていた。
 底の地面は広く、一か所から横向きに穴が空けられている。そこには奥に向かって線路が敷かれているようで、昼間の仕事を終えたトロッコも見えた。

「ここ、鉱山なのかな?」
『そのようだな』
「ここで採れる鉱物はなに?」
『さあな。よく分らんが鉄鋼石じゃないのか? オスニエルは、いくら鉄があっても足りないと言っていたぞ』
「ふうん」

 そういえば、オリバーも聞いた気がする。鉄道を通すために、たくさんの鉱山を開いているのだと。
 今、オリバー達はお釜状になっている場所の一番上にいる。掘り返された土による山があり、足元にはたくさんの石が転がっている。

「ねぇ、ドルフ、石捜ししてもいい?」
『好きにしろ』

 オリバーは地面を触って、好みの石がないか探す。
 感覚の問題なので説明するのは難しいが、こうして触っていくと、自分と波長の合う石がたまにあるのだ。小さなころからずっと、オリバーは定期的にドルフに連れ出してもらい、そんな石を見つけては、宝物にしてきた。

「……あ」

 土に半分埋もれていた乳白色の石を、オリバーは手に取った。見た目よりもずっと軽く、完全な丸ではなく、少し先がとがっていて雫に近い形だ。

「これだ」

 手に取ると、ほのかに力が伝わってくる。オリバーは満足して、それをポケットに入れた。

「ドルフ、ここは誰の領地?」
『誰のだろうな。王都からずいぶん南に来たし、鉄鋼の採掘もやっているってことは、ベンソン伯爵じゃないか?』
「ベンソン伯爵……」
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