8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 オズボーン王国は基本的に男系長子が王位継承者となる。オリバーが王太子なのは、慣例に基づき当然のものとして決まったことだ。だが、資質的にはアイラの方が向いているのではないかと、オリバーは思ってしまうのだ。

(そうじゃなくとも、母上のお腹の子が男の子だったら。僕よりもはきはきとした、王の器にふさわしい子になるかもしれない……)

 漠然とした不安が、いつもオリバーの心の内にはある。
 自分が王太子と呼ばれて、本当にいいのだろうか。その器であるといえるのだろうか。
 そもそも自分は、この国をどうしていきたいのだろう。長男だから継ぐという受動的な理由でやっていけるほど、国王という立場は甘くはないはずだ。

「オリバー様? オリバー様ってば!」

 呼びかけられていることにしばらく気が付かず、肩を掴まれてようやく我に返った。
 レナルドが、あきれた顔をして立っている。

「え? あ、ごめん。何?」
「教室、そっちじゃないよ。もう予鈴なるし、早く教室に戻らないと」
「ごめん。ボーっとしていた」

 早足で歩きだすレナルドの背中を、慌てて追いかける。

(やっぱりだめだなぁ、僕)

 オリバーは、自分に自信が持てないのだ。
 オスニエルもフィオナもアイラも、いつも自信に満ち溢れているように見える。オリバーはいつも、自分だけが出来損ないのような気がしているのだ。



 一日の授業が終わり、オリバーとアイラが後宮に戻ると、居間からは賑やかな声が聞こえてきた。

「誰か来ているのかな」
「そうかも。行ってご挨拶しましょうか」

 ふたりはそろって居間に向かうと、少しだけ扉を開けてのぞき込んだ。中にいた人影を見て、アイラが先に明るい声を上げる。

「あ! ポリー!」
「まあ、お帰りなさいませ、アイラ様、オリバー様」

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