8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 男子のソロパートに選ばれたエヴァンが恐縮しきっているのを見て、アイラは笑いかけた。

「エヴァンの声もきれいよ。ロングブレスで途切れず歌いきれるのはすごいと思う!」
「アイラ様もでしょう? うちの学年で一番上手な人に言われてもうれしくないなぁ」
「えへへ、照れちゃうよう。でも楽しみ。合唱大会は視察でお父様も見てくれるし」
「えー、陛下がくるの?」

 アイラの声に、クラスメイト達がさらに集まってくる。

「うん。お母様は今妊娠中だから、公務は控えているの。だから代わりにお父様が来るっておっしゃっていたのよ!」
「そうなのですね。楽しみだわ、陛下、とっても格好いいのですもの」
「オスニエル様が国王ってだけで、私、この国に生まれてよかったって思ってます……」

 女子の声がかしましく響いてくる。オリバーは少し離れたところを歩きながら、その様子を見ていた。

(すごいなぁ。アイラの周りにはいつも人がいる)

 アイラはいつもニコニコしている。父親似の美人で、性格は快活。はきはきと話す姿は誰からも好印象だし、それでいて偉ぶったところは無いので、みんな話しかけやすいのだ。

(アイラがみんなに好かれるのはわかる。僕も好きだし。ただそれに比べて僕は……)

 アイラの周りが賑やかなぶん、ふとした瞬間に、ひとり離れた場所にいる自分に気づいて落ち込んでしまう。
 自分が人から嫌われていないことはわかっている。かといって、それが好かれていることと同義ではないことも。

(僕より、アイラの方がよっぽど人に好かれている……)

 オリバーは置き去りにされたような気分で、アイラの周りの人だかりを眺める。

 国王である父の周りにも、いつもたくさんの人がいる。きっぱりと自分の意見を述べ、強いけん引力を持って国を支える理想通りの王、それがオスニエルだ。

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