8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
『眠れないのか?』
「すごい。ドルフはどうしてわかるの?」
『聖獣ってのは本来、気配に敏感なものだ』
オリバーはうれしくなって起き上がる。
「母上はどう?」
『心配そうにはしていたが、オスニエルも部屋に戻って来たからな、任せておけば大丈夫だろう』
「そう」
オリバーは胸を撫でおろす。
(だったら今のうちに……)
「ねぇ、ドルフ。お願いがある。父上が向かうはずの地盤沈下の現場ってわかる? 連れて行ってほしい」
オリバーの真剣な声に、ドルフは眉を顰める。
『……行ってどうする。現場確認は王の務めだ。幼いお前が目にする必要はない』
「アイラが父上に何かあったら大変だって心配しているし。僕とドルフでなら、空から確認することもできるじゃないか。危なければ父上を止めることもできるし」
『危険があってもオスニエルは行くだろう。自分の目で見なければ納得しない男だ』
「たとえそうでも、状況を僕が伝えてあげれば、アイラは安心するはずだよ」
オリバーが引く様子がないのを見て、ドルフはため息をついた。
「……アイラのためか?」
「不安になっているみたいなんだ。危険な場所じゃないことだけでも教えてあげたい。それに、ドルフがいるなら、僕が怪我をするようなことはないでしょ?」
信頼しているし、と片目をつぶって見せると、ドルフは一瞬目を細める。
『……お前、たまにこ狡いことを言うな』
言い方こそあきれたような様子だったが、ドルフは嫌そうでもない。あきらめたようにため息をつき、聖獣の姿に戻ると、くるりと背中を向けた。
『……乗れ』
「いいの?」
『珍しくお前が甘えてきたんだ。仕方ない』
「ありがとう!」
オリバーは上着を着て、銀色に光るドルフの背にしがみつく。