8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 彼女は想像していたよりずっと肝が据わっていて、民のことを考えていて、優しく愛情深い女性だった。いつしか自分が、彼女に見てほしいと願っていることにも気づく。
 しかし、最初にしでかしたことが酷すぎた。オスニエルは、そこから彼女の心を手に入れるまで、かなりの苦労をしなければならなかったのだ。

 元正妃候補のジェマがしでかした毒殺事件はひどいものだったが、フィオナを手に入れられたという点ではよかったと、オスニエルはひそかに思っている。

「……今日はフィオナの体調はどうだった?」

 オスニエルは妻を起こさないよう小声でそう言うと、フィオナの寝顔を眺めた。
 白い肌に、長い銀髪。嫁いできたころは、まだ少女のようなあどけなさがあったが、二十九歳の今は、すっかり大人の女性になっている。
 フィオナは現在、第三子を妊娠中だ。九ヵ月になった今は、お腹が大きくなっているためか、横向きで眠ることが多い。

『お前も心配性だな』

 毎日のように同じことを尋ねるオスニエルに、ドルフからはあきれたような声が返ってくる。

「昔のことを思い出せば、仕方ないだろう。アイラとオリバーを出産したときは、何ヵ月も寝込んで大変だったじゃないか」

 フィオナが双子を妊娠したのは、結婚して一年も経たない冬の事だった。
 当時はオスニエルもフィオナも妊娠には気づいておらず、ルーデンブルグという自然豊かな土地で、はじめての旅行を楽しんでいた。

 しかし、そこには聖獣が隠れ住んでいたのだ。
 名前はリーフェ。ドルフと同じ狼の聖獣だが、体毛が白い。孤独だったリーフェは、同族のドルフを見つけ、彼が自分の存在に興味を持つようにと、無計画にフィオナのお腹にいる双子に加護を与えた。

 無事、リーフェとドルフは存在を認め合い、リーフェの気は済んだものの、加護を与えられた方には、それを操るだけの意思もなければ、与えられた力の内容も分からない。

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