8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
* * *

 あまりにアイラがうるさいので、ドルフとリーフェは、ふたりで夜の散歩に出かけた。

『ここ、鉱山だね』
『ああ』

 リーフェは空からベンソン伯爵領の鉱山を見て、鼻を鳴らす。どこか荒涼としていてあまり好きではない。人の手が入りすぎた場所という感じがする。後宮のように緑でも植えてくれれば少しは違うのだが、ここは岩場ばかりだ。

 ドルフはリーフェに簡単に事の経緯を説明した。オリバーが悩んでいるとすれば、おそらくはチャドのことだ、と。

『でも、私にはオリバーが落ち込んでいるようには見えないんだけど』
『あいつは気づかい屋だからな。あまり人前で気持ちを伝えたりはしてこないだろうが。最近様子がおかしいのは本当だぞ?』
『ふうん。でもオリバーが隠しているなら、そのままがいいと思うんだけど』

 リーフェは人の心を慮ることは苦手だ。オリバーが見せようとしないのなら放っておけばいいと思う。アイラは気にしすぎなのだ。

『ここだ』
『オリバーがそのちっこい聖獣を拾った場所?』
『チャドだ。ネズミの聖獣だ。お前も一応オズボーン王国の聖獣なわけだが、まったく知らないのか?』
『ほかに聖獣がいるなんて、聞いたことないもんなぁ』

 ドルフとリーフェは地面に降り立つ。
 リーフェは目をつぶり、ここら一帯の状況を探った。
 目の前の山が鉱山は、表層を広く掘り、階段状に彫り進めていく露天掘りと呼ばれる工法が使われている。それが途中で止まり、横穴が伸びているところを見れば、これ以上の底には鉄鉱石がないと判断されたからだろう。
< 64 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop