8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

「アイラ様、今日はオリバー様は?」

 学校に着き、ひとりで馬車を下りるアイラを見て、レナルドとエヴァンが駆け寄ってくる。

「オリバー、今日は具合が悪いんだって」
「珍しいなぁ」
「今日は、グループワークがあるから、いてほしかったのに」

 レナルドの言い草に、アイラはむっとする。

「オリバーは便利屋じゃないのよ。いつもオリバーにばっかり頼らないで!」

 イライラしているから、攻撃的になってしまう。レナルドは不満げに唇を尖らせた。

「アイラ様だって、いつもオリバー様に宿題見てもらってるじゃん」
「それはそうだけど……。あれはオリバーがいいっていうから」
「俺たちだってそうだよ。オリバー様の方から教えてくれるんだし」
「わ、私たちがそんなんだから……!」

 泣かないと決意したばかりなのに、アイラの涙腺が緩む。すると、それを見たマーゴットとエミリアが駆け出してきた。

「レナルド様、エヴァン様、アイラ様に何をするの!」
「俺たちは何も」
「泣きそうになっているじゃありませんか!」

 かばってくれる友達が来てくれたおかげで、なんとか涙は引っ込めることができた。

「マーゴット、エミリア。違うの。いじめられるわけじゃないよ」
「そ、そうだよ」

 一応弁明したが、エミリアは信じていないようだ。

「行きましょ。アイラ様」

 ツンとそっぽを向いて、アイラの肩を抱いて歩き出す。

「……うん」

 アイラもそれ以上かばう気力はなくついていくと、背中に「ちぇっ」と拗ねたようなレナルドの声がした。

(なんか、朝からギスギスしちゃったな)

 友人たちがこんな風に気まずくなることは珍しく、アイラの気分はますます重くなる。

(オリバーがいたらな)

 オリバーは決して目立つ存在ではない。会話の主導権も握らないし、声を荒げることもない。いつもにこやかに微笑みながら、その場にいるだけだ。そんな彼を評して、「次期国王としては頼りないのではないか」と陰口をたたく者もいる。

(でも、オリバーがいると、喧嘩が起きないんだよ)

 オリバーは人を和ませる。喧嘩が起こりそうな時も、柔らかい物言いで人と人の間を取り持ってくれる。
 人には気づかれにくいオリバーの良さは、いないときにこれでもかと気づかされるのだ。
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