8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
アイラにとって、この日の授業は長く感じた。
一刻も早く城に戻って、ドルフを問い詰めたいのだ。帰りの挨拶さえもどかしい。
授業が終わるとすぐに立ち上がったが、教室の入り口で、マーゴットが待ち構えていた。
「アイラ様、あのね……私」
「マーゴット、ごめんね。私、オリバーが心配だから、今日は帰る!」
マーゴットには悪いが、今日はゆっくり相談に乗っているような心の余裕はない。アイラは一も二もなく教室を飛び出した。
いつも待たされている馬車の御者は、あまりに早いアイラの登場に、驚いたようだ。
「アイラ様、なにかあったんですか?」
「オリバーが心配だから帰るの!早く!」
「はっ!」
その日は、速度を上げたため、馬車もいつもより揺れた。着いた頃には、アイラは少しだけ馬車酔いをしてしまった。
転がるように後宮に戻り、フィオナの寝室に入る。
「お母様、オリバーはどう?」
「アイラ。お帰りなさい。早かったわね」
オリバーはまだ母の部屋にいた。朝と同じ姿勢だ。起きてはいるけれど、視点が定まっていない。
「オリバー、ごはん食べてる?」
心配で尋ねるとフィオナは首を横に振った。
「食べなきゃ死んじゃうよ」
「そうね。でも、無理やり食べさせても吐いてしまうから。……もう少し私に任せてくれないかしら。今オリバーには、時間が必要な気がするの」
「……うう。わかった」
アイラはもどかしかった。自分の知らないところで、オリバーに一体何があったのか。あの優しいオリバーをここまで憔悴させるなんて。
「こうなったら、やっぱりドルフに聞いてみないと!」
アイラはドルフを捜して、後宮中を走り回った。いつもなら居間かフィオナの寝室で昼寝をしているのに、今日に限ってどこにも見当たらない。
「はあ、はあ、どうして? リーフェもいないなんて、もしかしてふたりとも私から逃げ回っている?」
一度疑心を覚えたらそう簡単には戻らない。必死に探し回り、それでも見つけられなかったアイラは、オリバーの部屋に勝手に入ることにした。
「ここに何かヒントがあるはず……」
罪悪感はあれど、今はそれどころじゃない。