8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
「ごめん、入るよ、オリバー」
室内は、いつもの見知ったオリバーの部屋だ。ドルフもリーフェもいない。ただ、机の上に置かれた籠の中で、ネズミが寝ていた。
しかも、ネズミはなんだか少し大きくなっていて、毛色も茶色よりも金色っぽくなっている。
「ちょっと起きてよ。えっと、チャドだっけ」
思えば、この子のせいでオリバーと喧嘩にもなったのだ。理不尽な怒りが湧き上がってきて、アイラはしかめっ面でネズミを引っ張り上げる。
『うわっ』
チャドは目を開け、驚いたようにアイラを凝視した。
『お前は、オリバーの!』
「アイラよ。あなたね、オリバーをあんな目にあわせたのは!」
じろりと睨むと、チャドはぷいとそっぽを向く。その態度に、アイラの怒りは爆発した。
『どうしてくれるのよ! オリバーが壊れちゃった。どうして? 全然笑ってくれないよ。嫌だよ、あんなの』
チャドは答えない。アイラは悔しくてたまらず罵声を投げつける。
『馬鹿、馬鹿、馬鹿。オリバーを治してよ!』
『何をやっているんだ』
『落ち着きなよぉ、アイラ』
声を聞きつけたのか、そこへ、ドルフとリーフェがそろって入ってきた。二匹の姿を見た途端、アイラの体から力が抜けた。
「リーフェ、ドルフ。……うわぁん」
糸がプチンと切れたように、まぶたが決壊して涙が止まらない。
「オリバーが。……オリバーがぁ」
そこから、アイラは二匹がなだめても泣き続けた。
チャドは困ったようにオリバーに面差しの似た彼女を見つめ続ける。
「チュウ……」
絞り出したのは、わざとのネズミの声だった。