初めての恋ー孤独な私を見つけてくれたー
何故か、要は誰も来ない庶務課によく来る。
「ちょっと聞きたいことがあってさ。前に友倉商事の社長ってどんなお菓子が好みなのか
教えてくれよ。葉山の情報って凄く的確だからさ。」
「わかった」柚歩は自分の一番上の机の引きだしから1冊のノートをとりだした。
そのノートには柚歩独自で個人用に取引先の方のお土産のリストやお客様との話の内容などメモ程度に書き記していた。
「友倉商事の社長さんはあんこが苦手で今は奥様が、フィナンシェにはまっているみたいです」
柚歩は要の顔を見ずにノートを見たまま言った。
「今から友倉商事に、この間の資料にミスがあったみたいでさ、謝罪に行くんだけど。何か不都合があればダメだろうだから」
「そうなんですね。気を付けて」「ありがとう。葉山の情報は的確だからな。いつもありがとう」一瞬ビクッとしてお礼を言われたことに柚歩の顔は真っ赤になった。

「今度、何でもおごるからご飯付き合って」
「大丈夫です。おきになさらず」下を向いたまま非常階段のドアをあけ中に入ると要も柚歩の後についてきた。
「じゃあな」

要はエレベーターホールに向かってそのまま友倉商事に出かけていったようだった。要と柚歩が仲良く話していると、いつも陰口をたたかれる。要とあまり関わらないのがいいのだと柚歩は思っているが、同期だからなのか要は柚歩に親しげに話しかけてくる。
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