リアル指輪物語
夫の車から
それは、たまたま夫の車に乗せていた携帯の充電器を借りようとしていたときだった。
「…あれ?」
車のドリンクホルダーに何か光るものを見つけ、私はそれをつまみ上げた。
「…指輪?」
私のではない。
無論夫のでも…
「え~っとぉ…」
これをどう解釈してよいものやら…

いろんな意味で、夫の事を疑っている訳ではない。

いや決して…


…なぜなら…

その指輪は、夫の指よりはるかに太い指の人が嵌めるサイズなのである。

しかも、ボロボロで傷だらけ。

「…それでもプラチナなんですなあ」
内側を見ると、S.53.10.**.と刻まれている。
他にはなにやらマークのようなもの…
購入店のマークだろうか。
これが、誰かの結婚指輪である事は間違いなさそうである。

この指輪でわかることはたった2つ。
落としたのは8割がた男性。(こんなぶっとい指の女性はまれにいてもお逢いする確率が低そう)
結婚30週年であること。
…それだけ。
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