秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「さようなら、メイサ」
「君とはまた会うことがあるかもしれん。またな」
 ブロームはヒョイと肩を竦め、これには答えなかった。
「メイサ、君はいい友を持ったな」
 メイサとふたり、工房を背に並んで歩きながら自然とこんな言葉が出た。
「ええ。本当に」
 メイサはブロームからのプレゼントを胸に抱き、嬉しそうに答えた。
 王宮への帰路、俺は何度か胸ポケットに手を伸ばしかけたのだが、その度になんとなくタイミングが掴めないまま、おずおずと手を下げた。
 結局、この日は最後まで渡すことができなかった。

< 132 / 340 >

この作品をシェア

pagetop