秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ……そう言えば、昨日は舞踏会が開かれていたんだったわね。いつも行っている夜の施術も昨日はお休みだった。きっとアズフィール様が眠りについたのは、未明になってからだったのだろう。
 本音を言えば、もっと寝かせておいてあげたかったが、今日は陛下が定期的に行っている朝の謁見に、アズフィール様も同席する予定になっていた。
 やむなく、背中を向けて横たわるアズフィール様に呼びかける。
「アズ──」
「やめて!」
 私とピッタリ同じタイミングで、アズフィール様が大きな声をあげた。
「えっ?」
 ビクンと肩が跳ね、アズフィール様が私を拒絶しているのかと思い、兢々とした。
 すると、背中を向けていたアズフィール様がゴロンと寝がえり、仰向けに体勢を変えた。
 ……あ、目を瞑っている。これって、寝ぼけているんだわ。それにしたって、ひどい寝汗……。
 どうやらアズフィール様は、夢の中でなにかにうなされているようだった。
「いやだっ、爪が痛いよ」
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