秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
「……でも、たまにはこういう日もいいわね。王宮に来てからこっち、なんだかんだでずっと慌ただしくしていたもの。ゆっくり庭を散策するのは初めてだわ」
 エイル神聖王国の王宮周辺は、王都のど真ん中にありながらとても緑豊かだ。国立研究所が所有し、王宮裏地に接する十ヘクタールもの樹林公園はその筆頭だが、王宮も門から続く前庭と、私が先日腰を傷めた男性を発見した中庭とは別にもうひとつ、東側に整備された広い庭を所有していた。
 こちらは中庭の五倍ほどの広さがあり、石畳の小道で新緑がまぶしい木々の中を散策できるようになっている。さらに庭の途中には東屋や噴水の他、一万株が咲き誇るバラ園まで備わっているのだ。
「よーし、バラの見頃にはまだ少し早いけど、バラ園にも寄って蕾だけでも見てこよう」
 玄関を出ると、私は意気揚々と王宮東側の庭へと踏み出した。

 朝の澄んだ空気の中、景色を楽しみながらゆっくりと小道を進む。
< 173 / 340 >

この作品をシェア

pagetop