不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

《ゲホゲホッ、ごめん、迷惑かけて……》
「ううん、こっちはひとりで大丈夫。佐藤くんこそ平気?」
《うん。体はめっちゃつらいけど、実は妹が甲斐甲斐しく看病してくれててさて……不謹慎ながら感動してるとこ》

 ガラガラ声でそんなことを言う彼に、つい笑ってしまう。

 あれからすっかり元気を取り戻した妹さんは、週に何度か、お父さんと一緒に実家のお店に立つようになったそう。

 別れた恋人とも復縁が叶い、佐藤くんもひと安心。……かと思いきや。

『めっちゃイケメンのパイロットで複雑だった……』

 妹さんから恋人の写真を見せられた日の翌日、彼はそう言って頭を抱えていた。

 そんなこともあり、今回妹さんに看病してもらえるのはかなり嬉しいに違いない。

「よかったじゃない。ゆっくり休んでね」
《ありがと。復活したらバリバリ働くから、今回だけはマジごめん……》
「気にしないで。じゃ、お大事に」

 通話を終えると航空会社のカウンターに急ぎ、佐藤くんの分の航空券をキャンセルする。

 飛行機の時間まではまだ余裕があるので、カフェでコーヒー一杯くらい飲めそう。腕時計を一瞥し、ショップや飲食店が立ち並ぶ一角へ歩きだす。

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