不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 カジュアルながら落ち着いた内装の店内にはチーズやバジル、トマトソースの香りが漂い、食欲をそそられる。

 私と紗那は四人掛けのテーブルに案内され、とりあえず乾杯しようと、グラスのスパークリングワインを頼んだ。

「お疲れ様」
「お疲れ~」

 グラスを軽く合わせて、スパークリングワインを喉に流し込む。夏は冷たいお酒が美味しい季節なので、一気に半分以上減らしてしまった。

「ねえ千帆、私これ食べたい。天使のカプレーゼ」
「天使?」

 近頃あまりいい印象を抱いていない単語が飛び出し、思わず険しい顔をして私もメニューを覗く。

 皿の中央には通常のカプレーゼに使われるものより大きなモッツァレラチーズが艶々と輝き、その周囲に赤や黄色や緑といった、色とりどりのプチトマトが盛りつけられている。

「これのどこが天使なの?」
「真ん中のチーズよ。ブッラータチーズって言うんだけど、この店のメニューでは天使って表現してるの。ナイフを入れた瞬間、生クリームと細かいモッツァレラチーズがトロッと飛び出すんだから」
「なるほど、美味しそう……!」

 こちらの天使には、敵対心を抱く必要はないらしい。私たちはそのカプレーゼと、野菜たっぷりのカポナータ、ステーキ、パスタを注文し、店員が去ったところで紗那が話を切り出した。

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