すべての世界で、キミのことが好き❤~告白相手を間違えた理由
 学校に着いた。校舎前で待ち合わせをしていて、私が着いた時には桃音ちゃんがすでに待っていた。

「あ、来たー!」

 門の前でしゃがんでいた彼女は立ち上がり、満面の笑みを浮かべながら大きく手を振ってきた。

 明らかに学校で過ごしている時間よりもテンションが高い。
 私はテンションが少しも上がらない。

「まだ何も聞こえないよ」

 彼女はコソコソ私に呟く。

「桃音ちゃん、いつからいたの?」

「暇だったから結構前からいたよ! 行こうか!」

 彼女は校舎の中にはいろうとしてる。

「えっ? 入るの?」
「うん」

 当たり前でしょ?みたいな顔をしてこっちを見ている。拒否することが出来なくて、しぶしぶついて行く。

 幽霊いないよね、大丈夫かな?
 大丈夫だよね! うん、大丈夫! 

 心の中で自分に言い聞かせる。

 校舎に向かっていく。桃音ちゃんに幽霊の話をしなきゃよかったなと思う。まぁ、誘われた時に、行きたくないなと言えばよかったんだけど、その言葉が言えなかった。言って、ふたりの中に気まずい空気が流れたら嫌だなぁとか、嫌われたらどうしようとか色々考えちゃって。

 今もただ流されてついていく。
 玄関前まで来た時だった。

「ねぇ、聞こえない?」

 真面目な顔の桃音ちゃんを見て怖さが増す。

「えっ? 何も」

「しーっ」

 桃音ちゃんが人差し指を口に当てる。
 ふたりは顔を見合せたままじっとした。

「ふぇー……」

 何だろう。赤ちゃんの泣き声?

「ふぇ……」

 確かに何か声が聞こえる。

「いこっ!」

 桃音ちゃんが私の手を握り走り出す。
 
「えっ、行くの? 嫌だ……」

 やっと私は本音を口に出すことが出来たけれど、彼女は一切聞いていない。

 わたしは手を引っ張られ、転びそうになりながらも何とか持ちこたえ、桃音ちゃんと共に声がする方に走った。

 声がしたのは、校舎の外で裏側の方だった。
 ぐるっと後ろにまわると、その泣き声は大きくなる。

 恐怖の気持ちが百パーセントになる。

 ――怖い。

 たどり着いた場所にいたものは、全く予想のしていないもの、いや、予想のしていない子だった。 



「い、ぬ?」

 私たちは同時に呟き、ぽかんとした。

 大きな木の下にある箱の中に、小さな子犬がいた。
 
「可愛い!」

 ここにいたのは、幽霊ではなくて、とても可愛らしい栗毛色の子犬だった。

 幽霊は嫌いだけど、犬は大好き!
 心が軽くなった。

 私は近くに寄った。
 手の匂いを嗅がせて、しばらくしてから、抱き上げてみる。

 とても軽くて、ふわっとした感触。
 癒されるー!

「可愛い!」
「可愛いね!」

 犬と出会ってから「可愛い」しか言っていない。本当に可愛いんだもん。

「誰?」

 しばらく子犬とたわむれていると、後ろから声が聞こえた。振り向くと、陸くんが犬のご飯を入れたお皿を持って立っていた。

 辺りは薄暗くなってきたけれど、彼のカッコイイは満ち溢れている。暗くても伝わる白い肌のツヤツヤ感。

「なんか、声がしたから来てみたら子犬がいて……」

「あ、ちょうど今、外に出ていたから聞こえたのかな? この子を貰ってくれる人を探しているんだ。この箱に入った状態であの物置の横に置かれていてね」

 彼が、小さな物置を指さす。

「ひとりでいたの?」

 子犬を抱き上げて、話しかけた。
 
 こんな狭い箱のなかでひとりぼっち。夜も暗闇の中でひとりぼっち。
 私だったら、寂しいし、怖い。想像しただけで震えた。

「最初は三匹いたんだ。けれど二匹は、うちの親戚のおばさんと、父さんの会社の人の所へ行った。あとはこの子だけ。うちで飼いたいんだけど家族が犬、苦手で……」

 彼はうつむいた。うつむくと、しょんぼりする犬みたい。ふわっと陸くんに、犬の耳が生えているイメージがしてきた。髪の毛も栗毛色でこの子と似ている色だし。
 陸くんがこの子のお母さんに見えてきた。陸お母さん、リクママ。

 子犬と見つめあった。

 この子が私に訴えてる。一緒にいたいって。リクママもうちの子をお願いって目をしている。

「私、この子を飼っていいかお母さんたちに聞いてみるね!」

「本当に? ありがとう」

 彼が天使のように微笑んできた。

 この笑顔、絶対に許可をもらわないとって思わせてくる。

 でも、きちんと聞けるか不安。

 今まで何度も、これ、お願いしてみようかなって気持ちになることがあっても、お願いする直前に「やっぱりやめとこう」ってなって、やめたりもした。

 どうせ断られそうだし、それなら聞くのがムダなのかなって。

 それになんか、元々人に、自分の気持ちを伝えたりするのが苦手で――。



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