公爵の娘と墓守りの青年
「いたた……。ちょっとネリー! 痛いって。傷のところを叩かないでくれよ」
「知らないっ! あれ程、怪我しないでって言ったのに、怪我して……!」
口を膨らませて、ネレヴェーユは上目遣いでカイを見た。
「え? これ、怪我に入るの? 俺にとってはちょっとやんちゃなかすり傷なんだけど」
「何処がちょっとやんちゃよ。私が来る前は痛がってたくせに」
むすっとした顔でネレヴェーユはさらりと躱そうとするカイに言った。
リフィーアが小屋で眠っているのに安心したカイは、左の二の腕に負った傷に包帯を巻いているところをネレヴェーユに見つかってしまった。
慌てて隠そうとすると、ネレヴェーユに怒られ、現在に至る。
「痛がってないよ。血も流れてないし、傷も本当にかすり傷だし。心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だって。ね?」
小さく微笑して、カイはネレヴェーユを安心させるように彼女の手に触れ、頷いた。
「……分かったわ。かすり傷って信じるわ。でも、次に怪我したら怒るから」
「うん、分かった。ありがとう、ネリー」
大きく頷き、カイは安堵の息を洩らす。