【完結】終わった恋にフラグはたちません!

◇ ◇ ◇


「──で、結局先輩はぁどうしたいんですかぁ─?」
「どう、ヒック、したいって─何がぁ─……ヒック!」

あ─……何だか頭がフワフワする─。
気持ち良すぎて目を瞑ると今朝のゆうちゃんの顔が浮かんできちゃう。
とてもビックリして……ううん、あれはすごい困惑した顔だ─、突然私があんなことしちゃったからぁ─!

「飲み過ぎですよぉ─先輩。
もう、先輩から急に飲みの誘いがあったと思ったら、何ですかその面白い展開はぁ─!」

面白い展開って……全然面白くないんだけどぉ─!

今朝の出来事から一日中ずっと、ゆうちゃんの困惑した顔が頭から離れなかった。
以前、ゆうちゃんと寝てしまった時はお互いお酒も入っていたし……ついっていう状態だったけれど、今回はお互いシラフ、お酒のせいになんかできないじゃない。

そんなこんなで家に帰るのが気まずかった私は、絵本編集部で後輩だった間宮 美鈴を飲みに誘ったのだ。
美鈴さんは私よりも女子力高いし恋愛経験も豊富……何か良いアドバイスでももらえたらとても心強い。もう私一人の恋愛経験値では既にキャパオーバー。

「つまりはぁ─、先輩は元旦那様とどうなりたいかってことですよぉ─。別に今ではお互い何の障害もないんですからぁ」
「障害はなくても─、ようは気持ちの問題だよぉ!
あらし(わたし)、離婚されてるんだよ─…それもたった一年で!」
「でもぉ─、一回離婚したぐらいでまた同じ相手と結婚…なんてことよくあるじゃないですかぁ─」
「まぁ、それはあるところにはあるけどさぁ─……」

美鈴さんの言いたいことは何となくわかってる。
何をそんなに複雑に考えることがあるのか、好きだったら真っすぐ相手に向かって行けばいいじゃないか!
──それは全くその通り……でも、三十路の女の恋は、その先に “結婚” という二文字をすぐ結びつけてしまうもの。
歳を重ねると一から恋をするだけでも難しいのに、ましてや離婚を切り出された相手となんて……きっとまた同じ末路を辿ってしまうのではないかと臆病になる。

だって、まだ好きな相手からの別れの言葉はあまりにも辛すぎる……


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